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ADF2013.01 リリースノート  2013年4月

ADF2013.01では、分子系ではFDE法による局在化した電子状態を用いた電荷移動積分計算への対応や、TDDFTによる励起状態の記述を改善するためのrange-separated汎関数やDIM/QM法などの各種方法が搭載されています。また、周期系ではバンド伝導における有効質量の計算や、金属結晶に対するフェルミ面の計算などに対応しました。さらに、ReaxFFやDFTBなどの大規模系に対応可能な計算モジュールについて並列計算のパフォーマンスが大幅に向上しています。COSMO-RSなどその他のモジュール、および改良点・変更点の詳細につきましては以下をご参照ください。

Summary ADF2013.01 improvements

ADF
〇機能追加
 ・range-separated xc汎関数
 ・DIM/QM (discrete interaction model/quantum mechanics)法
 ・励起エネルギー計算におけるfull XC kernelの考慮
 ・軌道エネルギー差として励起エネルギーを求めるDFT-TS法
 ・開殻分子に対してのスピン軌道相互作用を考慮した近似的な励起エネルギー計算
 ・subsystem TDDFT法におけるTamm-Dancoff近似内でのハイブリッド汎関数の使用
 ・輸送特性: greenモジュールによるwide-band-limit計算
 ・FDE法に基づく電荷移動積分(charge transfer integral)の計算
〇解析オプション
 ・Prof. WeinholdのNBO 6.0バージョンへの対応
 ・NCI (non-covalent interactions index)の計算
 ・SEDD (single exponential decay detector)の計算
〇精度の改善
 ・Beckeの数値積分グリッドの搭載(本バージョンよりデフォルト使用)
 ・動径のスプライン関数と球面調和関数(Zlm)を用いた電子密度フィッティング法の搭載
〇高速化
 ・Hartree-Fock法の交換項の積分計算における距離カットオフの導入
 ・scalable SCF法の搭載
BAND
 〇正孔/電子輸送における有効質量の計算
 〇バンドギャップ予測のための微分不連続性を持つGLLB-SCモデル汎関数
 〇フェルミ面の計算&描画
 〇Beckeの数値積分グリッドの搭載(オプション使用)
 〇原子核の大きさを考慮する機能
 〇原子核位置での電子密度の計算
 〇計算効率に関するさまざまな改善
DFTB
 〇カー・パリネロ法(現バージョンでは実験的な機能という位置付け)
 〇共役勾配法による構造最適化計算
 〇DFTB軌道の描画(Demoパラメータにのみ対応)
 〇部分状態密度(PDOS)の計算&描画
 〇D3-BJ分散力補正
 〇並列計算のパフォーマンス向上
 〇DFTB3用の3OBパラメータ
ReaxFF
 〇取り扱える原子数の上限がなくなりました。
 〇原子の空間分布情報を利用することで並列化効率が大幅に改善されました。
 〇a, b, cそれぞれの軸方向に単位セルを周期的に拡張する機能
 〇加速MDのためのforce-bias Monte Carlo法
 〇ReaxFF-lg: ロンドン分散力を持つ反応力場
GUI
〇一般
 ・大きい系を扱う際の表示速度の向上
 ・マウス操作の改善(分子の拡大縮小と並行移動)
 ・周期系でセルをまたぐ結合の表示
〇ジョブ管理
 ・ADFjobsウィンドウ内でのlogfileおよびwarningとerror情報の表示
 ・全ジョブの表示と、選択したディレクトリの直下にあるジョブだけの表示の切り替え
 ・ディスク領域を節約するためのジョブのアーカイブ保管
 ・ジョブのクリーンアップ機能
 ・異なるマシン間のジョブの同期
〇入力設定
 ・すべての計算モジュールについて新機能のほとんどの入力設定に対応
 ・結晶構造のデータベース(多くの基本的な結晶、ゼオライト、MOPACで最適化された結晶構造を含む)
 ・新しい回転オプションと質量中心または幾何学的中心の分子操作
〇結果の表示
 ・ADFview: フィールドデータ計算における様々な改善
 ・ADFview: (スピン)電子密度を計算するためのショートカット
 ・ADFview: 新しいプロパティの表示(NCI, SEDD, BANDの原子核位置でのプロパティ)
 ・ADFspectra: ADFspectraウィンドウ内での基準振動モードの表示
 ・ADFdos: DFTB計算における(P)DOSの表示
 ・KFBrowser: 要約されたデータの表示(データを円、折れ線、棒グラフで表示することも可能)
 ・KFBrowser: タブで区切られた数値データとしてExcelなどの表計算ソフトにコピー&ペーストできるようになりました
Scripting
〇adfreport: ReaxFFのMDトラジェクトリーをPDB, xmol, groファイル形式で出力
〇adfreport: .rxkf, .rkf, .runkfファイルへの対応が改善
〇adfprepare: ADF以外のジョブ(ReaxFF, UFF, BANDなど)への対応が改善
COSMO-RS
〇複数の純物質のプロパティを計算する時の簡便な入力設定
〇COSMOファイルを作成する際の計算テンプレートの単純化(ADF-GUIのPresetメニューから”COSMO-RS compound”テンプレートを選択するように変更)
〇COSMO-RSデータベース”ADFCRS-2010″をダウンロードするためのメニュー項目がCOSMO-RS GUIに追加
〇オクタノール‐水系の分配係数を計算するテンプレートがCOSMO-RS GUIに追加
UFF
〇UFFによる簡易構造最適化をより正確に行えるように、GUI上で描画した結合をUFF計算の入力情報として使用できるようになりました。
〇UFF力場パラメータのチューニングとAtom Typeの拡張ができるように、UFF力場パラメータおよびAtom Typeの編集ができるようになりました。
〇UFFマニュアルを公開しました。
FlexMD
〇MDスクリプトツールのPyMDの名前をFlexMDに変更しました。
〇FlexMDマニュアルを充実させました。

詳細

ADF: range-separated xc functionals

Range-separated (RS)汎関数では、2電子クーロン演算子をHFとDFTの交換項に分割したものを使用します。ADFでは分割のスイッチング関数として湯川ポテンシャルを利用します。RS汎関数の使用には、近似交換相関汎関数ライブラリのXCFUNが必要になります。

ADF: DIM/QM: discrete interaction model/quantum mechanics

Discrete Interaction Model/Quantum Mechanics (DIM/QM)法により、分子が溶液中にある状態や金属ナノ粒子に吸着している影響を考慮した光学プロパティの計算が可能になります。DIM/QM法で分子と相互作用する外部環境は下記の3種類の記述が可能です。
-Discrete Reaction Field (DRF): 誘起双極子と静電荷による相互作用
-Capacitance Polarizability Interaction Model (CPIM): 誘起双極子と誘起電荷による相互作用
-Polarizability Interaction Model (PIM): 誘起双極子だけによる相互作用
DRFは溶媒の記述に、CPIMは小さい金属ナノ粒子の記述に、PIMは大きい金属ナノ粒子の記述に最適です。

ADF: full XC kernel in excitation energy calculations

XCFUNライブラリを使用することで、TDDFTの励起状態計算においてfull (non-ALDA) kernelを評価できるようになりました。本機能はGGA汎関数(ハイブリッドとRS汎関数も含む)で使用できます。

ADF: excitations as orbital energy differences (DFT-TS)

通常はTDDFT計算により励起エネルギーを求めますが、コアの励起エネルギーなど、単純にKohn-Sham分子軌道の軌道エネルギー差として励起エネルギーを求めることが有効な場合があります。新バージョンでは軌道エネルギー差として励起エネルギーを計算できるようになりました。本手法はTDDFT法よりも計算コストが低く、DFT遷移状態法(DFT-TS)で行われているようにSCF計算において軌道の部分占有を指定することが可能です。

ADF: approximate spin-orbit coupled excitation energies open shell molecule

スピン軌道相互作用を含むスピン非制限TDDFT計算で開殻分子の励起エネルギーが計算できるようになりました。本機能にはいくつかの強い制限があります。

ADF: TDA in subsystem TDDFT with hybrid functionals

Subsystem TDDFT法はFDE (frozen-density embedding)法の励起状態計算への拡張に基づいています。Tamm-Dancoff近似を用いることで、intra-subsystem partにハイブリッド汎関数が使用できるようになりました。

ADF: transport properties: NEGF, green: wide-band-limit

wide-band limitにおいては電極とのカップリングはエネルギーと独立であると仮定できます。従って、この場合は自己エネルギーを計算する必要がなくなります。またこのことは、Green関数の固有空間がエネルギーと独立であることを意味します。従って、対角化計算を事前に行うことができ、これによりDOSや透過係数の計算を大幅に高速化できます。

ADF: charge transfer integrals with FDE

FDE法によって生じさせた局在化した電子状態におけるハミルトニアン(site energyと電荷カップリング)と重なりの行列要素が計算できるようになりました。

ADF: interface to the NBO 6.0 package of Prof. Weinhold

NBO 5.0に代わりNBO 6.0のバージョンが正式対応になりました。機能は前回のバージョンと基本的には同じです。

ADF and ADF-GUI: NCI: non-covalent interactions index

非共有性の結合領域が、電子密度とreduced density gradient (RDG)の低い値を示す領域として描画できるようになりました。

ADF and ADF-GUI: SEDD: single exponential decay detector

SEDD (single exponential decay detector)は、原子・分子およびその集合体における結合と電子の局在化に関する情報を抽出する新しいツールです。SEDDでは電子密度とその2次までの微分情報を使用します。

ADF: Becke grid for numerical integration

ADF2013より、デフォルトで使用される数値積分の方法が変更されました。新バージョンでは、Beckeによって考案されたファジーセル法に基づく新しい数値積分スキームを使用します。この結果として、構造最適化、遷移状態探索、および数値振動計算の際に取り扱うポテンシャルエネルギー曲面がより滑らかになり、数値ノイズも低減され、収束がより速くなっています。また、新しいデフォルトの積分グリッドは、数値的に取り扱いの難しい交換相関汎関数(例えば、M06など)に対してより安定した振る舞いを示します。

ADF: density fitting with radial spline functions and Zlm’s

Zlmフィット法では、Beckeグリッドにおけるセルの分割方法と同様の方法で全体の電子密度を原子ごとの電子密度に分割します。このとき、個々の電子密度は動径のスプライン関数と球面調和関数(Zlm)の実部で近似されます。この方法は、ADFのデフォルトの方法よりも精度の高いフィッティングが可能で、より大きな軌道角運動量量子数(l)に対応することが可能です。ただし、計算時間はデフォルトの方法よりも増加します。

ADF: distance cut-offs in calculating Hartree-Fock exchange integrals

Hartree-Fock法の交換項の積分計算において距離カットオフが導入されました。これにより、特に大規模系の場合は計算時間とメモリ使用量が削減されています。

ADF: scalable SCF

新しいScalable SCF法(この段階では実験的な機能という位置付けです)は通常のSCF法よりも並列化効率がずっと良くなっており、また、計算中に使用するスクラッチのファイルサイズも削減されています。ScalableSCF法は、現時点ではADFのすべての機能に対応しているわけではありません。大規模な並列計算環境(例えば、128コア以上)をお持ちのユーザ様には非常に興味深い機能となっています。

BAND: effective mass

価電子バンドのトップと伝導バンドのボトム位置においてバンドの曲率が計算できるようになりました。バンド伝導における移動度の評価に使用できます。

BAND: GLLB-SC model potential

GLLB-SCは微分不連続性を考慮したモデル汎関数です。通常、計算のHOMO-LUMOギャップと実験のバンドギャップが比較されます。しかし、正確な汎関数を用いた場合でも、微分不連続性の項を持たないために両者の結果は一致しません。GLLB-SCモデル汎関数では高速かつ改善されたバンドギャップの予測を可能にします。

BAND: Fermi surface

金属性の場合、BANDはフェルミ面を自動的に計算します。計算されたフェルミ面はBAND-GUI上で描画できます。

BAND: Becke grid

BANDにもBeckeの数値積分グリッドが搭載されました。今回からADFではデフォルト使用となった数値積分法と非常によく似た実装となっています。原理上、新しい数値積分法によって、より滑らかなポテンシャルエネルギー曲面を取り扱うことができます。現段階では依然として実験的な機能という位置付けですが、収束の悪い構造最適化計算においてはすでに非常に有用かもしれません。

BAND: finite nucleus

原子核の大きさを考慮する機能が追加されました。ガウス分布と一様分布モデルに対応しています。この機能によりコアに関連したプロパティ計算が影響を受ける可能性があります。構造最適化計算に対しての影響は全くありません。

BAND: performance improvements

大きい系を扱う際に生じていたいくつかのパフォーマンス上のボトルネックが解消されました。プログラム上の変更点は単に技術的なところだけで、基本的なアルゴリズムは同じままです。今回のコードの最適化過程において、ソースコード量が10%ほど少なく記述できるようになりました。大きい系に有効となる今回の高速化の多くはデフォルト設定ではありません。興味のあるユーザ様はBANDのユーザガイドの”Performance for large unit cells”をご覧ください。お使いのハードウェアとご興味の計算に応じて、CPU計算時間を削減するのに有効となる設定方法が説明されています。

DFTB: Car-Parrinello (experimental feature)

実験的な機能という位置づけですが、DFTBにCar-Parrinello Born Oppenheimer (CPBO)法とCar-Parrinello Molecular Dynamics (CPMD)法が搭載されました。これらのCar-Parrinello法は現時点ではシリアル計算にのみ対応しています。

DFTB: Conjugate gradients geometry optimization

共役勾配法(CG法)による構造最適化計算が可能になりました。Geometryキーワード中に”method conjgrads”を追加することで使用できます。CG法はデフォルトの準ニュートン法よりも収束がずっと遅いため、系が大きく準ニュートン法が適用できない場合にのみ使用すべきものとなります。

DFTB: Visualization of DFTB orbitals (only for “demo” parameters)

計算に使用される数値原子軌道を用いてDFTBの軌道を表示できるようになりました。ただし、現時点では、基底関数の動径データを含む”Demo Slater-Koster”パラメータファイルにのみ対応した機能となります。

DFTB: Partial density of states, PDOS

BANDと同様の実装方法で部分状態密度(PDOS)の計算&描画がDFTBでもできるようになりました。

DFTB: D3-BJ van der Waals dispersion correction added

Grimmeの分散力補正がSCC-DFTB法とDFTB3法におけるエネルギーと力の計算に追加されました。現時点では分子(非周期系)の計算にのみ対応しています。

DFTB: (Parallel) performance improvements

並列計算のパフォーマンスが向上しました。新バージョンでは、重なり、ハミルトニアン、電子密度の行列要素に対してスパース行列であることを考慮したメモリの分散ストレージを行います。これにより大規模な並列計算が可能になっています。

DFTB: 3OB parameters for DFTB3 method included

Elstnerらによって考案されたDFTB3用の最新の3OBパラメータ(H, C, N, O元素)と、DFTB.orgからの各種DFTBパラメータが追加されました。本パラメータは、非営利使用のユーザ様のみ申請後に無料でお使いいただけるものとなっております。今回の3OBパラメータは軽元素からなる系について高速かつ精度の高い計算を可能にします。

ReaxFF: performance improvements

ReaxFFの並列化のスキームが完全に書き直されました。新バージョンでは原子の空間分布情報を全プロセスで共有するようになっています。また、プログラム上に課されていた原子数の上限を取り除きました。1プロセスあたりに課されている原子数の上限(10万原子数)はそのままです。

EEMのスパース線形方程式を解くための共役勾配法の並列化アルゴリズムが改善され、並列計算時の通信量が削減されました。新バージョンでは最近接にあるプロセス間だけの通信で十分になります。

ReaxFF: improvements for restarting non-reactive calculations

非反応MD計算の場合のリスタート機能が改善されました。これまではリスタート時に結合を再計算していましたが、新バージョンではリスタートファイルに保存されている結合情報を使い、前回の計算をそのまま再開できます。

ReaxFF new feature: automatic scaling of simulation size

それぞれの軸方向に単位セルを周期的に拡張する機能が追加されました。この機能はcontrolファイル中でreptx、reptyおよびreptzキーワードを指定して使用します。1より大きい整数値の使用で、指定した方向に指定した回数分だけ単位セルを拡張します。この際、原子の座標は元々の単位セルの値から平行移動して得られたものが使用されます。MD計算中、周期的に拡張されたセル中のすべての原子は独立に動くことが
できます。

ReaxFF new feature: support for London Dispersion forcefields

新バージョンのReaxFFではロンドン分散力を考慮した力場を使用することができます。本機能では、ロンドン分散力に合わせて最適化されたパラメータを使用する必要があります。詳細については下記のオリジナル論文をご覧ください。

Liu, L., Liu, Y., Zybin, S. V., Sun, H., Goddard III, W. A., ReaxFF-lg:
Correction of the ReaxFF Reactive Force Field for London Dispersion, with
Applications to the Equations of State for Energetic Materials,
The Journal of Physical Chemistry 115 (40), 11016-11022 (2011)

ADF2013では上記論文で作成された力場ファイルが使用できます。

ReaxFF new feature: force-bias Monte Carlo

ReaxFFのMDとforce-bias Monte Carlo (fbMC)を組み合わせることができるようになりました。fbMC法では簡単な入力の設定だけでMDシミュレーションを大幅に加速化させることができます。詳細については下記のMeesらによる論文とそこで参照されている各種論文をご覧ください。

M. J. Mees, G. Pourtois, E. C. Neyts, B. J. Thijsse, A. Stesmans,
Uniform-acceptance force-bias Monte Carlo method with time scale to study
solid-state diffusion, Physical Review B 85, 134301 (2012)

COSMO-RS

〇複数の純物質のプロパティを計算する時の簡便な入力設定
〇COSMOファイルを作成する際の計算テンプレートの単純化(ADF-GUIのPresetメニューから”COSMO-RS compound”テンプレートを選択するように変更)
〇COSMO-RSデータベース”ADFCRS-2010″をダウンロードするためのメニュー項目がCOSMO-RS GUIに追加
〇オクタノール‐水系の分配係数を計算するテンプレートがCOSMO-RS GUIに追加

COSMO-RSに必要となるCOSMOファイルを作成するための計算手順がADF-GUI上で単純化されました。COSMO-RS GUI上で、COSMO-RSデータベース”ADFCRS-2010″をより簡便にインストールして使用できるようになりました。また、COSMO-RS GUI上で、オクタノール‐水、ベンゼン‐水、ヘキサン‐水およびエーテル‐水系の分配係数を計算するための各テンプレートが作成されました。1つの溶質の複数の溶媒に対する溶解度の計算が1度の計算で実行できるようになりました。

UFF

〇UFFによる簡易構造最適化をより正確に行えるように、GUI上で描画した結合をUFF計算の入力情報として使用できるようになりました。
〇UFF力場パラメータのチューニングとAtom Typeの拡張ができるように、UFF力場パラメータおよびAtom Typeの編集ができるようになりました。
〇UFFマニュアルを公開しました。

GUI: General

〇すべての計算モジュールについて新機能のほとんどに対応
〇表示速度の向上
大きい系を扱う際の表示速度が向上しました。ReaxFFなど周期系で多くの原子を表示する場合に特に有効です。
〇GUI上での分子の並行移動と拡大縮小
多くのユーザにとって分子を構築する際に原子を平行移動させる操作が難しいことが分かりました。新バージョンのデフォルト設定では、マウスの中ボタンと右ボタンの機能を入れ替えるようにしました。右ボタンは分子の平行移動を、中ボタンは分子の拡大縮小を行います。これまでのマウス操作で使いたい場合は、”GUI Preferences”から設定を戻すことができます。
〇周期系の結合表示
周期系に対してセルの境界をまたぐ結合が適切に表示できるようになりました。GUI上のBonds > Guess Bondsからセルの境界をまたぐ結合を描画できます。
〇外部ファイル形式への対応
MOPACの.arcファイルの読み込みに対応しました。また、.cifファイルの読み込みが改善されています。.gro, .xmolおよびPDBのトラジェクトリーファイルの出力に対応しました。
〇背景の透明化
分子や軌道などを画像で保存するときに、画像の背景を透過化できるようになりました。この機能はWindowsには対応していません。
〇Mac OS X用の新しいADF-GUIアプリケーション(.app形式)
Max OS X用に、これまでのADFLaunchに代わり.app形式のアプリケーションを作りました。.app形式にしたことでライセンスのインストールなどずっと扱いやすくなっています。本アプリケーションはMountain Lionでも問題なく動作します。

GUI: Jobs

〇ADFjobsウィンドウ内でのlogfileおよびwarningとerror情報の表示
実行中のジョブのlogfileをADFjobsウィンドウ内に表示できるようになりました。これによりlogfileのウィンドウがいくつも立ち上がるのを回避できます。また、warningとerror情報もADFjobsウィンドウ内に表示されるようになり、ジョブが正常に終了していないケースを見落としてしまうのを防いでくれます。
〇全ジョブの表示と、選択したフォルダの直下にあるジョブだけの表示の切り替え
これまでの選択したフォルダの直下にあるジョブだけの表示機能に加え、保存されているすべてのジョブを一覧で表示する機能が追加されました。ADFjobsの右下にあるトグルボタンで表示を切り替えます。
〇ジョブのインポート/エクスポート
計算したジョブを他のユーザと共有できるようにgzip圧縮tarアーカイブ形式でのファイルのインポート/エクスポートを行うコマンドが追加されました。
〇ジョブのアーカイブ保管
ジョブファイルをgzip圧縮tarアーカイブ形式で保管できるようになりました。この際すべてのファイルがアーカイブ保管されるわけではないので、ADFjobsは依然としてジョブのステータス情報などを認識できます。ADFviewなどでジョブの計算結果を表示するときには、自動的にファイルが解凍されます。本機能はディスク領域を大幅に節約するのに有効です。
〇ジョブのクリーンアップ機能
各ジョブの不要なファイルを簡単に削除できるようになりました。
〇異なるマシン間のジョブの同期
デスクトップやラップトップなど複数のマシンを使用している場合に、一方のマシンで計算しているジョブをもう一方のマシンと同期できるようになりました。本機能の使用には両マシン間でsshのアクセスが行える必要があります。このためWindowsマシンについては動作しません。

GUI: Input

〇新機能のほとんどの入力設定に対応
多くの新機能が計算モジュールに追加されました。それらのほとんどの入力設定がADFinputでサポートされています。例えば、Beckeの数値積分グリッドの使用や軌道エネルギー差で励起エネルギーを計算する機能などに対応しています。
〇結晶構造データベースの拡張
ADFinputの検索メニューから使用できる分子構造のデータベースが拡張されました。新しいデータベースは多くの基本的な結晶、ゼオライト、MOPACで最適化された結晶構造を含みます。周期構造を読み込むとき、ADFinputは自動的に周期系モードに切り替わります。
〇新しい構築機能
分子操作として新しい回転オプションが追加されました。1次元周期系(例えばカーボンナノチューブ)や2次元周期系をcifファイルから読み込む場合、cifは3次元データとして保存されるため、真空方向にも単位セルが繰り返されて読み込まれます。本機能により不要な次元を減らす際に正しい軸方向に簡単に調整することができます。その他、分子の質量中心または幾何学的中心を使った操作が追加されました。

GUI: Results

〇新機能を使った計算結果の表示
BANDで計算された原子核位置でのプロパティ(電子密度など)がADFviewで描画できるようになりました。また、NCIとSEDDの描画(および計算)機能が追加されています。さらに、NOCVに関する表示機能が拡張されました。
〇フィールドデータ計算における様々な改善
ADFviewでフィールドデータを計算するとき、ADF, BAND, DFTBの計算モジュールについては計算の進捗を示すダイアログが表示されるようになりました。この際、フィールドデータ計算に関する情報(densf用の入力スクリプトと出力)をダイアログ上で表示できるようにもなっています。計算に時間がかかる場合は、ADFjobsのキューを使って計算させることも可能です。従って、ADFjobsのキューでリモートにあるマシンが設定されている場合には、フィールドデータの計算をリモートのマシンに任せることが可能です。また、対象のフィールドデータにかなりの計算時間がかかった場合には、ADFviewはそのデータを保存することを促します。データを保存しておくことで、次回以降もADFview上でこのデータを再度計算することなく表示できます。
〇(スピン)電子密度を計算するためのショートカット
ADFview上でスピン電子密度を表示するにはいくつかの操作手順を必要とします。便利な機能として、1つのメニューコマンドをクリックするだけでスピン電子密度を表示するためのショートカットを追加しました。
〇基準振動モードの表示
ADFspectraウィンドウ内に基準振動モードが表示されるように改良しました。マウスカーソルで振動モードを選択して表示します。また、マウスのドラッグ操作で振動の表示範囲を変更できます。
〇DFTB計算における(P)DOSの表示
ADFDosモジュールを使って、DFTBの計算結果に対してDOSおよびpartial DOSを表示できるようになりました。
〇バイナリデータの閲覧
KFBrowserの機能が拡張されました。これまでのバージョンではバイナリデータ(各種KFファイル)のすべてのデータ項目が表示されていました。しかし、これらのデータ項目のほとんどは、かなりテクニカルで、通常の用途としてはあまり有用な情報ではありませんでした。今回から、KFBrowserは”expert”と”non-expert”の2種類の表示モードを持ちます。新しく追加された”non-expert”がデフォルトの表示モードです。この表示モードでは、KFファイルからのデータを表示しますが、通常用途として有用となるデータ項目のみが表示されます。またこの表示では、データの項目名と出力のフォーマットが閲覧しやすいように修正されています。ユーザはこれらのデータを選択してグラフ(棒、折れ線、円グラフ)で表示することができます。また、表示される結果は数値がタブで区切られた形式でコピーされ、コピーしたデータをExcelなどの表計算ソフトに貼り付けてその後の解析を行うことが可能です。

Scripting

adfreportコマンドの機能が拡張され、.t21ファイルのほか、.rxkf、.rkfおよび.runkfファイルへの対応が大幅に改善されました。上記計算結果のファイルを引数に”-h”オプションでadfreportを実行すると、ヘルプ情報に加えて、指定した結果のファイルに保存されたデータのリストが表示されるようになっています。また、ReaxFFのMDトラジェクトリーをPDB, xmol, groファイル形式で出力できるようになりました。

adfprepareコマンドについては、ReaxFF, UFF, BANDなどADF以外のジョブへの対応が改善されました。

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