Molpro

リリースノート

Molpro 2015.1 リリースノート  2015年12月

Molproのバージョン2015.1がリリースされました。
多くの新機能や改善、バグ修正がなされています。主要な新機能は以下の通りです。

Projector-based wavefunction-in-DFT embedding

Wavefunction-in-DFT法が導入されました。本機能により、DFTで表される環境中における、ほぼすべての基底状態の波動関数を考慮できます。詳細は、文献 [F. R. Manby et al., J. Chem. Theory Comput. 8, 2564 (2012)] をご参照ください。

Intrinsic bond-orbital analysis and orbital localization (IBO)

IBOは、局在化軌道を求め、波動関数を解析するための効率的で信頼できる方法です。詳細は、文献[G. Knizia, Chem. Theory Comput. 9i, 4834 (2013)]をご参照ください。

Interface to NBO6

自然結合軌道解析(NBO)バージョン6に対するインターフェースが導入されました。別途NBO6のライセンスが必要です。

Beyond LMP2 treatment of intermolecular pairs in local coupled cluster methods

LCCSD(T)計算では、近接した(、かつ相互作用の弱い)ペアはLMP2法でのみ取り扱われます。LMP2ではvan der Waals相互作用を取り扱うことが難しく、このためLCCSD(T)の計算精度を損なっていました。新バージョンでは、LMP2を超えるレベル(local direct RPAからLCCD[S]-Rの範囲)、かつ計算コストの増大を抑えた方法で、近接したペアを取り扱うことが可能になりました。詳細は以下の文献を参照ください。

O. Masur, D. Usvyat and M. Schutz, J. Chem. Phys., 139, 164116 (2013);
M. Schutz, O. Masur and D. Usvyat, J. Chem. Phys., 140, 244107 (2014).

Distinguishable cluster Approximation (DCSD and DCSD-F12)

DCSDやDCSD-F12法を導入しました。本方法は、CCSDの計算コストでより精度の高い結果を得ることができます。特に、DCSD法は、CCSD(T)と同程度の精度が得られます。詳細は以下の文献を参照ください。

D. Kats and F. R. Manby, J. Chem. Phys. 139, 021102 (2013);
D. Kats, J. Chem. Phys. 141i, 061101 (2014);
D. Kats, D. Kreplin, H.-J. Werner, F. R. Manby, J. Chem. Phys. 142, 064111 (2015).

Analytical energy gradients

DCSDにおける解析的エネルギー勾配を計算できるようになりました。
現在、CCSD(T)、MP2-F12、CCSD(T)-F12、およびDCSD-F12に対応するように開発中です。対応出来次第、本機能を追加費用なしで提供予定です。

Orbital relaxed properties and analytical nuclear gradients for excited states

軌道緩和を考慮した励起状態のプロパティや解析的エネルギー勾配をlocal CC2やlocal ADC(2)で計算できるようになりました。これにより、大きな発色団の励起状態の構造最適化が行えます。さらに、local ADC(2)を用いることで、ADC(2)レベルの遷移モーメントが得られます。詳細は以下の文献を参照ください。

K. Ledermuller, D.Kats and M. Schutz, J. Chem. Phys. 139, 084111 (2013);
K. Ledermuller and M. Schutz, J. Chem. Phys. 140, 164113 (2014);
M. Schutz, J. Chem. Phys. 142, 214103 (2015).

PNO-LMP2 and PNO-LMP2-F12

計算効率の高いPNO-LMP2やPNO-LMP2-F12が導入されました。詳細は以下の文献を参照ください。PNO-LCCSD(T)は現在開発中です。対応出来次第、追加費用なしで提供予定です。

H.-J. Werner, G. Knizia, C. Krause, and M. Schwilk, J. Chem. Theory Comput., 11, 484 (2015);
Q. Ma and H.-J. Werner, J. Chem. Theory Comput., DOI: 10.1021/acs.jctc.5b00843 (2015);
C. Koppl and H.-J. Werner, J. Chem. Phys., 142, 164108 (2015).

Magnetizability and rotational g-tensor at DF-LMP2 level using GIAOs

NMR化学シフトを計算する機能が拡張され、磁化率や回転gテンソルが計算できるようになりました。詳細は、以下の文献を参照ください。

S. Loibl and M. Schutz, J. Chem. Phys., 141, 024108 (2014).

Faster density fitting integral routines

G. Kniziaによって作成された改良積分ルーチンを用いることで、密度フィッティングを使用したDFTやF12法の計算速度が高速になりました。

Vibrational perturbation theory: VPT2

semi-quartic force field(QFF)に基づく、VPT2法が導入されました。これにより、少ないコストで非調和振動数や振動定数を計算することが可能になります。QFFの決定には、解析的エネルギー勾配は不要なため、任意の計算方法で得られた電子構造に対して適用できます。

Vibrational multi-reference methods: VMCSCF, VMRCI

振動多参照法が導入されました。VMCSCFレベルでモデルを最適化することが可能です。また、相関効果は、それぞれの計算レベルで変分的に考慮できます。

Anharmonic Franck-Condon factors: FCON

非調和振動波動関数に基づくFranck-Condon計算が導入されました。振動波動関数を回転することによって、あるいはDuschinsky効果を考慮するためにポテンシャルエネルギー曲面を変換することによって、Franck-Condon因子を計算することが可能です。この機能により、正確な光電子スペクトル(吸収、蛍光)を計算することが可能です。なお、本機能では、新しく開発したプログラムSURFTRANSを使用します。

Transformation of multi-dimensional potential energy surfaces: PESTRANS

(SURFプログラムで計算される)基準座標に基づく多次元ポテンシャルエネルギー曲面を任意の基準座標に回転、変換することができます。これにより、一つのポテンシャルエネルギー曲面の情報から、Franck-Condon因子や同位体の振動スペクトルの計算を効率的に行うことができます。

Localized normal coordinates

SURFプログラムを用いて、多次元ポテンシャルエネルギー曲面を局在化基準座標で表すことが可能になりました。3種の局在化スキームを利用することができます:(a) CH伸縮モードのみを局在化、(b) すべての基準座標を分子クラスター計算におけるサブユニットに局在化、(c) a, b両方を行う。すべての局在化スキームは対称性を認識します。

Calculation of arbitrary vibrational states: VIBSTATE

Molproの以前のバージョンでは、振動状態の計算は、基準振動、第一振動オーバートーン、およびそれらの単純な結合バンドに限定されていました。新しいVIBSTATEプログラムでは、任意の振動状態を指定することが可能になります。ただし、SURFプログラムと振動相関プログラムで用いるパラメータが適切に調整されている必要があります。

Raman scattering activities

すべての振動SCFや振動相関プログラムにおいて、ラマン散乱活性を計算できるようになりました。分極率がHartree-Fockレベルでのみ計算できるように、計算精度はまだ限られています。

Reaction databases

分子の計算結果を保存し、それを検索することができるデータベース機能が追加されました。また、化学反応式も保存でき、分子の計算結果と関連付けることが可能です。このデータベースは手作業で作成する、あるいは適切なMOLPROの計算を実行することで一部自動的に作成することができます。データベースの解析によって、化学反応に伴うエネルギー変化のサマリーを得ることができます。加えて、2つ、あるいはそれ以上の類似のデータベースを反応ごとに比較することも可能で、これにより、それらの違いを統計的に解析することもできます。いくつかの一般的なデータベースはプログラムに含まれています。

0.0.1 New density-fitting DFT-SAPT program

新しいDFT-SAPTプログラムがMolproに導入されました。本プログラムは、 monomer-centered (MCBS)、monomer-centered plus (MC+BS)、または dimer-centered (DCBS)基底と組み合わせて使用できます。DCBSを使用した場合でも、800電子程度のかなり大きな系を このプログラムを用いて検討できます。詳細は、文献[A. Heselmann and T. Korona. J. Chem. Phys. 141, 094107 (2014)]を参照ください。

関連製品

ADF
量子化学計算ソフトウェア
Gaussian
量子化学計算ソフトウェア
MOPAC2016
量子化学計算ソフトウェア
TURBOMOLE
量子化学計算ソフトウェア