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ADF2006.01 リリースノート  2006年7月

ADF2006.01では、B3LYP等ハイブリッド汎関数の採用、スピン-軌道相互作用を考慮した励起エネルギー計算など高精度計算を実現する新機能が搭載されました。ADF-GUIにおいてもQM/MM計算対応、分子モデル構築の操作性向上など機能追加・改良されています。

詳細

Introduction

ADF2006.01は、BANDに対応したグラフィカルユーザインターフェース(以降、GUI):BAND-GUIを搭載した最初のリリースです。ADFのGUIには改良が加えられ、より速く、より多くの機能が搭載されました。ADF2006.01では、SCF計算でのハイブリッド汎関数の採用や解析的2次微分を含む新機能が搭載されると共に、様々な改良・バグフィックスが行われました。

BAND Graphical User Interface (BAND-GUI)

ADF2006.01は、BANDに対応したGUIを搭載した最初のリリースです。
BANDinputでは、ADF-BANDを使用したことがないユーザでも簡単にBAND計算の設定を行うことができます。BANDinputでは3次元周期構造の構築やBAND計算の詳細な設定をGUI上で簡単に行うことができます。BANDinputは、BAND計算の計算スクリプトの作成から実行までをサポートしています。BANDinputは、ADFinputの機能・設計に合わせて作られています。
ADFviewは、BANDで得られた差電子密度や軌道等の出力データ(.runkfファイル)を可視化することができます。BANDstructureはバンド構造図の表示を行います。ADFtailは、BAND計算の進行状況の表示に対応しています。BOBはBAND計算の出力の表示が行えます。

ADF Graphical User Interface (ADF-GUI) improvements

ADF-GUIの主な改良点・変更点は次のとおりです:
 ・フラグメント解析に対応しました。
 ・金属−配位子から成る構造の構築が簡単にできるようになりました:
  多くの標準構造や配位子の構造が組み込まれています。
 ・ADFinputやADFmovieが、linear transitの入出力をサポートしました。
 ・PDBファイルを用いたQM/MM計算に対応しました。
 ・一部のサンプルファイルに.adfファイルが追加されました。
  ($ADFHOME/examples/adfフォルダ)
 ・NMR計算における原子の選択が簡単になりました。
 ・ADFlevels、ADFview、ADFspectraが、スピン−軌道相互作用を
  考慮した計算結果の表示に対応しました。
 ・ADF-GUIの新機能を説明するチュートリアルが追加されました。

ADF-GUIのその他の改良点・変更点は次のとおりです:
 ・選択したすべての原子に構造を追加する機能が加えられました。
 ・原子のポップアップメニューにたくさんのオプションが追加されました。
 ・Taskの項目として、properties only が追加されました。
 ・templatesの機能が使いやすくなりました。
 ・入力フィールド内の変更の有無を示すカラー表示を追加しました。
 ・画像解像度が選択できるようになりました。
 ・Tip of the day表示機能が追加されました。
 ・ADFinputのレイアウトを改良しました
  (分子表示スペースが広くなりました)。

Hartree-Fock and hybrids in the SCF

ハイブリッド汎関数を使用するために必要な、SCF計算におけるexact exchange(Hartree Fock exchenge)の計算機能が追加されました。Hartree-Fock, B3LYP, B3LYP*, B1LYP, KMLYP, O3LYP, X3LYP, BHandH, BHandHLYP, B1PW91, MPW1PW, MPW1K, PBE0, and OPBE0が追加されました。キーワードDEPENDENCY(あるいは、ADDDIFFUSEFIT)を使用する必要があります。現時点では、構造最適化、遷移状態探索、IRC、Linear Transit、NMR、EPR g-tensor、TDDFT、frozen coreなどの計算には使用できません。

Analytic second derivatives inside ADF

解析的2次微分計算プログラムSDがADFプログラムに組み込まれました。ADF計算において、AnalyticalFreqブロックキーワードを使用することで、GGA汎関数(BP86, PBE, RPBE, revPBE, BLYP, OLYP, OPBE)のとき解析的2次微分計算が行えます。Unrestricted計算のバグも解消されています。解析的2次微分計算は、数値的計算に比べて非常に高速、かつ安定です。ADF-GUIでは、振動計算のデフォルト設定が解析的2次微分になりました。

Frozen-Density Embedding

Orbital-free frozen-density embedding (FDE)法では、周囲の環境を考慮した計算が行えます。この方法では、溶媒などの周囲の環境に対応する電子密度に基づくembeddingポテンシャルの平均値を用いて、溶媒に囲まれた溶質分子などの計算を行います。この方法は、DFT/DFT embeddingとも呼ばれます。

Spin-Orbit coupled TDDFT

閉殻分子において、スピン軌道相互作用を含む相対論効果を取り入れたTDDFT計算(2重群使用)が行えるようになりました。2元成分の相対論効果を取り入れたTDDFT計算では、正確な非相対論限界と正確な3重項励起の3重縮退を取り扱うことができます。

Resonance Raman

共鳴ラマン(RR)散乱の時間依存性に従って、RR散乱断面積の相対強度は、分子の基底状態の基準振動モードに射影された励起エネルギーの1次微分の2乗に比例するとした仮定に基づき算出されます。ADFのVIBRONモジュールでは、このような励起状態のエネルギー1次微分を数値解析的に計算することができます。

MM dispersion

正確なvan der Waals分散力やエネルギーを得るために経験的なMM補正が追加されました。この方法には、原子の分極率、C6係数、原子半径、ダンピング関数などの様々な経験的パラメータが必要です。

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Further ADF improvements and changes

 ・Basisキーにおいて、ghost原子が識別されるようになりました。
 ・相対論効果を含む計算の際にTAPE12ファイルが不要になりました。
  TAPE12はcreateを実行するときにのみ必要となります。
 ・SCF計算の収束が遅い場合に用いるMulti-step smearingオプションや
  Averill-Painter法が追加されました。
 ・原子数の上限(デフォルト)が10000になりました。
 ・Handbook of Chemistry and Physics(86th edition, Editor D.R.Lide,
  CRC Press, Boca Raton, 2005.)に基づき原子核の電気四重極子
  モーメントや磁気モーメントの値が更新されました。
 ・COSMO法計算のための溶媒の設定値が追加されました。

Property improvements

 ・NMR計算の原子核指定が簡単になりました。

BAND BasisDefaults key

BAND計算の入力に不可欠であった基底関数やフィッティング関数の指定を行うための新しいBasisDefaultsキーが追加されました。これにより、BAND用の入力が簡潔になり内容の把握や修正が容易になります。

Further BAND improvements

 ・差電子密度や軌道のプロットオプションの追加
 ・フラグメント解析の改良
 ・バンド構造図のプロット機能
 ・大きな格子のBAND計算で生じるバグの修正

Maxmemoryusage removed

MAXMEMORYUSAGEキーワードで制御されていた一部の配列サイズをすべて動的割り当てに変更しました。MAXMEMORYUSAGEキーワードがなくなりましたので、メモリサイズを縮小する場合にはvectorlengthを使います。

Automatic conversion of the binary KF files

異なるbyte orderやintegerサイズを持つファイルを自動変換する機能が追加されました。さらにKFファイルを書き出すためのkfwrappersが追加されました。これにより、異なるプラットフォーム間でバイナリファイル(TAPE21など)をコピーできるようになり、dmpkfやudmpkfによる変換が必要なくなります。

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