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ADF2016.101 リリースノート  2016年3月

ADF2016.101では、分子系・周期系ともに汎関数ライブラリLibXCへのインターフェースを取ることで、多くの新しい汎関数が利用できるようになりました。特に、周期系のBANDがHSE06などのHybrid汎関数に初めて対応しました。プロパティ計算としては、分子系のADFにおいて、四重極子やX線領域の発光スペクトルの計算に対応したことに加えて、各種高速TDDFT計算(sTDA, sTDDF, TDDFT-TB)が可能になりました。また、周期系のBANDでは、NOCV解析への対応や、指定したバンドに電子ホールを導入する機能が追加されました。さらに、ReaxFFでは、15個以上の新しい力場ファイルが追加されたことに加え、シミュレーション中に生じた素反応を自動的に発見してくれる”Chemtrayzer”が使用できるようになりました。DFTBやCOSMO-RSなどその他のモジュール、および改良点・変更点の詳細につきましては以下をご参照ください。

ADF

Model Hamiltonians

Interface to LibXC: a library of exchange and correlation functionals

交換相関汎関数ライブラリLibXCへのインターフェースが取られました。これにより、MVS, N12, CAM-B3LYP, wB97X-Vなどの多くの新しい汎関数がADFで利用できるようになりました。利用できる汎関数の全リストはLibXCのウェブサイトからご覧いただけます(http://www.tddft.org/ programs/Libxc)。LibXCで利用できるほとんどの汎関数は、構造最適化、遷移状態探索、IRC、LT、数値振動、励起エネルギー(ALDAまたはALDAXカーネルに対応)の計算に使用できます。また、いくつかのGGA汎関数に対しては、解析的に振動計算を行うことができ、励起エネルギーの計算においてフル(non-ALDA)カーネルが使用できます。一方、LibXCで利用できるCAM-B3LYPなどのrange separated汎関数に対しては、励起エネルギーの計算において近似カーネルが使用されており、交換項がダブルカウントされている可能性があります。ただし、wB97、wB97X、wB97X-Vのrange separated汎関数についてはフルカーネルが使用できます。

Range separated hybrids with error function

これまでのバージョンでは、CAMY-B3LYPなどのrange separated汎関数を使用する際、湯川ポテンシャルによるスイッチング関数を用いた距離分割だけが可能でした。新バージョンでは、Hartree-Fockの交換項に対する新しいRIスキームを導入することで、スイッチング関数として誤差関数が使用できるようになりました。CAM-B3YLP、wB97、wB97X-V、LRC_wPBEのrange separated汎関数が新たに利用できます。

SM12: solvation model 12

ミネソタの連続溶媒和モデル(Solvation Model 12, SM12)[JCTC 9 (2013) 609] が一点計算で使用できるようになりました。ADFへの実装はGeorg SchreckenbachグループのCraig Peeplesによってなされました(論文準備中)。

COSMO solvation model: defaults

COSMO表面のデフォルトがEsurfからDelleyに変更されました。新しいデフォルトの採用により、COSMO溶媒和モデルを使用した時の構造最適化計算と振動計算の信頼性が増しています。

FDE with external orthogonality

Dhabih ChulhaiとLasse Jensen [JCTC 11 (2015), 3080]によって、external orthogonality(EO)と呼ばれる分割した部分間の分子軌道の直交性を保証する手法がADFのFDE法に実装されました。本機能はエキスパート向けです。

CDFT: constrained density functional theory

電荷に拘束を課すconstrained DFTがサポートされました。Constrained DFTは、WuとVan Voorhisによる方法 [PRA 72 (2005) 024502] が、Michele PavanelloとPablo RamosによってADFに実装されました(論文投稿済)。本機能はエキスパート向けです。

Spectroscopy

singlet-triplet and spin-orbit coupled kernel range-separated functionals

range separated汎関数に対して、三重項励起状態の計算およびスピン軌道相互作用を考慮した励起状態の計算が可能になりました。

CV(n)-DFT: constricted variational DFT

CV(n)-DFT(constricted nth order variational DFT)は、基底状態から励起状態に遷移するときのクーロンと交換相関ポテンシャルの両方の変化に応答して、励起させた占有軌道を緩和させる方法です。Mykhaylo KrykunovとTom Zieglerによって、一重項励起状態の計算に対してADFに実装されました [CP 391 (2011) 11, JCTC 9 (2013) 2761]。

Quadrupole oscillator strengths

硬X線分光法で使用される短波長領域では、双極子近似は妥当でない場合があります。特に、金属K端のX線吸収分光法(XAS)に対しては、振動子強度の計算に四重極子を含めることが必要になります。文献 [JCP 137 (2012), 204106]に基づき、四重極子を含む振動子強度の計算機能がChristoph JacobグループのAndrew AtkinsによってADFに実装されました。

NTO: natural transition orbitals

文献 [JCP 118 (2003) 4775]で考案された自然遷移軌道(natural transition orbital, NTO)が計算できるようになりました。NTOは、対象の励起をある軌道から別の軌道への一電子励起として解釈し、それを可視化するのに最も適したものです。

TD-DFT+TB

TD-DFT+TB法では、DFTによる分子軌道とTD-DFTBによるカップリング行列を使用して励起エネルギーを計算します。TD-DFT+TB法では、通常のTD-DFT法を用いた場合と比べて励起エネルギーの計算時間が大幅に短縮されます。この方法は、SCF計算において(メタ)GGAまたはLDAを用いるのが最も適しています。ADFへの実装はThomas HeineグループのRobert Rugerによってなされました(http://arxiv.org/abs/1603.02571)

sTDA, sTDDFT

Grimmeらによって考案されたsTDA法(simplified Tamm-Dancoff approach)[JCP 138 (2013) 244104]とsTDDFT法(simplified time-dependent DFT approach)[CTC 1040-1041 (2014) 45] がADFに実装されました。sTDAとsTDDFT法は、SCF計算において(メタ)Hybridまたはrange-separated Hybrid汎関数を用いるのが最も適しています。これらの方法では、通常のTDAまたはTDDFT法を用いた場合と比べてHybrid汎関数使用時の励起エネルギーの計算時間が大幅に短縮されます。

XES: X-Ray emission spectra

X線発光スペクトル(XES)の計算機能がADFに実装されました。XESの計算では占有軌道間のエネルギー差でX線領域の発光エネルギーを表します。これはXESの計算としては単純すぎる近似にみえますが、遷移金属錯体の価電子が内殻ホールに遷移することによるX線発光スペクトル(V2C-XES)をよく再現することが示されています。ADFへの実装はChristoph JacobグループのAndrew Atkinsらによってなされました [PCCP 15 (2013) 8095]。

DIM/QM SEROA: surface-enhanced Raman optical activity

DIM/QM法で表面増強ラマン光学活性(SEROA)を計算する機能がDhabih ChulhaiとLasse JensenによってADFに実装されました [JPCA 118 (2014), 9069]。

Transport properties

Charge transfer integrals with FDE: charge separation and arbitrary spin configuration

FDE法における電荷移動積分(charge transfer integral)の計算機能が拡張されました。ADFへの実装は、Michele PavanelloとPablo Ramos、およびその他の著者らによってなされました [JCP 140 (2014) 164103, JPCB 119 (2015) 7541、および投稿済論文]。

Analysis

adf2damqt: DAMQT interface

分子の電子密度解析に用いられるサードパーティ製品のDAMQT 2.0パッケージ [Computer Physics Communications 192 (2015) 289]へのインターフェース(adf2damqt)が開発されました。

FOD: fractional orbital density

FOD(fractional occupation number weighted electron density)の計算とADFviewでの描画に対応しました。FODは、静的電子相関の解析に用いることを意図してGrimmeとHansenによって考案された電子密度です [Angewandte Chemie IE 54 (2015) 12308]。

Structure and Reactivity

Molecular dynamics (MD) and NEB transition states search via ASE (see GUI release notes)

後述のASE(Atomic Simulation Environment)とのインターフェースを取ることで、分子動力学とNEB法を用いた遷移状態探索の計算がADFで実行できるようになりました。

Accuracy and performance

New Hartree-Fock RI scheme (for Hybrid functionals)

Hartree-Fockの交換項を計算するための新しいRIスキームが実装されました。LibXCのrange separated Hybrid汎関数を用いた場合を除き、新しいスキームはデフォルトでは使用されません。新しい実装は、これまでのRIスキームと異なる特長を持ち、高次の軌道角運動量量子数(hとi)を持つ関数に対応した補助基底が使用できます。また、特に、f殻を有する元素やエネルギー勾配(力)の計算に対して、デフォルトのスキームよりも計算が安定し、より精度が高くなることが見込まれます。

New SCF module

新しいSCF法が実装されました。特に大規模系に対して、これまでのSCF法と比べて並列化効率が劇的に向上しています。また、SCF計算中のディスクI/Oの使用量も削減されています。

BAND

Model Hamiltonians

interface to LibXC: a library of exchange and correlation functionals

LibXCライブラリへのインターフェースを取ることで、MVSやN12を含む多くの新しい交換相関汎関数がBANDで利用できるようになりました。利用できる汎関数の全リストはwww.tddft.org/programs/Libxcをご参照ください。

Short Range-Separated Hybrids for periodic systems

short range separated hybrid汎関数は、バンドギャップの予測に有用で、広範囲の材料に対して基底状態の性質をよく記述します。新バージョンのBANDでは、Hartree-Fockの交換項に対する新しいRIスキームを導入することで、short range separated Hybrid汎関数が0〜3次元の周期系に対して利用できるようになりました。ただし、現時点では一点計算のみの対応となり、スピン軌道相互作用は考慮できません。利用できる汎関数としては、HSE03、HSE06、HJS-B97X、HJS-PBE、HJS-PBESOLが含まれます。また、HSE型の汎関数に対しては、スイッチングパラメータのomegaを調節することができます。

Hybrids for non-periodic systems

LibXCライブラリから利用できる全てのHybrid汎関数がBANDによる分子の計算(0次元系)で使用できるようになりました。ただし、現時点では一点計算のみの対応となり、スピン軌道相互作用は考慮できません。

COSMO solvation model: various improvements

COSMO表面のデフォルトがEsurfからDelleyに変更されました。新しいデフォルトの採用により、COSMO溶媒和モデルを使用した時の構造最適化計算の信頼性が増しています。さらに、COSMO法を使用した時の数値的な安定性に影響を与えていたバグが修正されました。

Tweaking Occupation numbers:

  • User-defined Spinpolarization指定した電子スピンの拘束の下でSCFの計算ができるようになりました。
  • Defining Electron Holes
    指定したバンドに電子ホールを導入するための機能が追加されました。基底状態と電子ホールを導入した状態とのエネルギー差は励起エネルギーの近似値として用いることができます。

TDDFT

New parameter-free Polarization Kernel

A. Bergerによって考案された新しいパラメータフリーの分極カーネルが実装されました。絶縁体、半導体および金属(3次元周期系のみ対応)の光学吸収スペクトルを精度よく記述します [http://dx.doi.org/10.1103/ PhysRevLett.115.137402]。

Analysis

Periodic Energy Decomposition Analysis (PEDA)

周期系のエネルギー分割解析(PEDA)ができるようになりました。PEDAにより、フラグメント間の相互作用エネルギーは、パウリ反発、静電相互作用、軌道緩和の3つの項に分けて出力されます。これらのエネルギー項は、フラグメント間の相互作用の化学的性質を解析するのに有用です。
[M. Raupach and R. Tonner http://dx.doi.org/10.1063/1.4919943]

PEDA Combined with Natural Orbitals for Chemical Valency (PEDA-NOCV)

PEDAでは、NOCV(Natural Orbitals for Chemical Valence)解析と組み合わせることで、軌道緩和のエネルギー項をさらに複数の項に分けて出力することができます。それぞれのエネルギー項に対応するNOCVのdeformation densityはσ結合やπ結合といった化学結合の視覚的なイメージを与えてくれます [M. Raupach, T. Ziegler and R. Tonner]。

Structure and Reactivity

Analytical Lattice Gradients

格子の最適化計算用に、そのエネルギー勾配を解析的に計算するための初期実装がなされました。この実装は、ナノチューブのような1次元系に対しては2倍の高速化が達成されています。一方、対称性の高い3次元系に対しては、初期実装では対称性がまだ考慮できず、数値微分によるセルの最適化よりも一般的に遅くなります。本機能はエキスパート向けです。

COSMO-RS

Scripting with COSMO-RS Tools for command line scripts have been added or improved:

COSMO-RSの計算をユーザ作成のコマンドラインスクリプト内で使用できるよう、下記の関連モジュールが追加・改良されました。

  • ADFprep: ADFのCOSMO法を用いた計算に対応しました。
  • CRSprep: COSMO-RS用のジョブファイルの複数作成が可能です。
  • ADFreport: COSMO-RSの計算結果の取り扱いに対応しました。
  • KF (Keyed File)ユーティリティがCOSMO-RSの計算結果のバイナリファイルに対応しました。
  • COSMO-RS用にスクリプト計算の例題が追加されました。

Vapor pressures calculation consistent with the COSMO-SAC 2013-ADF method

以前のバージョンでは、蒸気圧の計算にCOSMO-SAC 2013-ADF法を用いた場合、異なる方法が使用されていました。ADF2016では、文献 [Ind. Eng. Chem. Res. 53, 8265 (2014)] に記載されている通りのCOSMO-SAC 2013-ADF法と一致した方法が使用されます。

The COSMO-RS Ionic Liquid Database ADFCRS-IL-2014

イオン液体は、その低い蒸気圧と高い伝導性および、物理化学的性質が簡便に調整できることから、化学、材料科学(電池電解液)、化学工学(ガス吸収・精製)など、多くの異なる分野において多様性に富んだ応用がなされています。ADF2016では、イオン液体用に80個のカチオンと56個のアニオンを含むADFのCOSMOファイル(.coskf)のデータベースが用意されました。本データベースおよび関連するCOSMO-RS計算のチュートリアルを提供してくれた中国北京化工大学のZhigang Lei教授の研究グループにSCMは深く感謝します。イオン液体に関するCOSMO-RSのGUIのチュートリアルは下記のマニュアルページよりご覧いただけます。
https://www.scm.com/documentation/Tutorials/COSMO-RS/Ionic_Liquids/

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DFTB

New DFTB parameter sets:

  • QUASINANO2015
    QUASINANO2015のパラメータセットが利用できるようになりました。このパラメータセットは、周期表のCaまでのすべての元素のペアに対応しており、エネルギーと力の両方の計算が可能です。
    http://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jctc.5b00702)
  • 3ob-3-1 from DFTB.org (Br, C, Ca, Cl, F, H, I, K, Mg, N, Na, O, P, S, Zn)
    DFTB.org パラメータから3ob-3-1が利用できるようになりました。3ob-3-1は、有機化学、生化学向けに精度の高い計算を可能にする、広範囲の元素に対応した最新のDFTBのパラメータセットです。

Analytical excited state gradients for TD-DFTB

TD-DFTBにおいて励起状態のエネルギー勾配が解析的に計算できるようになりました。本機能により、励起状態の構造最適化と振動計算(数値二次微分)が非常に高速にできるようになりました。

Vibrationally resolved UV/Vis spectroscopy

TD-DFTBによる励起状態の振動計算の結果を用いることで、Franck-Condon因子の計算が可能になりました。Franck-Condon因子から、電子の吸収・発光スペクトルにおける振動構造の予測が可能です。

Improved SCC convergence with the DIIS method

DFTBで原子電荷をセルフコンシステントに解く際の繰り返し法が改良されました。より安定で効率的な計算ができるようになりました。

H-X damping

H-X dampingは、水素原子を含む共有結合の記述を改善するため、DFTB3の計算で用いられている手法です。この手法が、SCC-DFTBの計算でも利用できるようになりました。

ReaxFF

Chemtrayzer: Chemical Trajectory Analyzer

M. Dontgenらによって開発されたChemtrayzerを使用することで、ReaxFFで計算されたトラジェクトリーに対して反応パスや反応ネットワークを自動的に発見できるようになりました。反応速度定数の計算にも対応しています。

New force fields

15個以上の新しい力場ファイルが追加されました。利用できる力場ファイルのリストは下記マニュアルページより確認できます。
https://www.scm.com/documentation/ReaxFF/Included_Forcefields/

ACKS2

ACKS2法による電荷平衡法の計算がサポートされました。使用にはACKS2法でフィッティングした力場ファイルが必要になります。

Performance improvements for very narrow and long unit cells.

セルの一辺が極端に長い、あるいは短い場合に見られたパフォーマンスの低下が改善されました。

GUI

Molecular Dynamics and Nudged Elastic Band (TS) for ADF, BAND, DFTB and ReaxFF via ASE

ASE(Atomic Simulation Environment)とのインターフェースを取ることで、ADFモデリング・スイートの各種計算プログラム(ADF/BAND/DFTB/ReaxFF)とASEを組み合わせて、分子動力学(MD)計算やNudged Elastic Band(NEB)法による遷移状態探索が実行できるようになりました。本機能はGUIから利用でき、分子系に対してはMDとNEBのトラジェクトリーの可視化に対応しています。なお、現時点では周期系のトラジェクトリーの可視化には対応していません。

Minimum Energy Crossing Point (MECP)

異なる状態間のポテンシャル面が交差する領域において、そのエネルギー差が最小となる構造はMECP (Minimum Energy Crossing Point)と呼ばれます。新バージョンでは、ADFがMECPの構造最適化計算に対応しました。また、MECPの入力はADFinputのModelパネルから設定可能です。MECPコードを提供してくれたJeremy Harvey教授にSCMより謝意を示します。

Assorted GUI features:

  • GUIの設定パネルの右上に、関連するマニュアルページを表示するためのボタン(iボタン)を付けました。
  • 一つの計算で複数の分子が扱えるようになりました。
  • 複数の計算が逐次的に実行できるようになりました。一つ前の計算で最適化された構造が次の計算の入力構造として自動的に受け渡されます。例えば、DFTBで構造最適化後、ADFでさらに構造最適化し、最後にADFで吸収スペクトルの計算を行うという利用が可能です。
  • ADFview:
    • MOを表示するとき、旧バージョンではADFviewのメニューから表示したいMOを選択していました。新バージョンでは、MOの情報が記載された別ウィンドウのテーブルが最初に表示され、そのテーブルから表示したいMOを選択するようになりました。テーブルにはMOに関するより多くの情報が表示され、大きい分子を扱う際に特に使いやすくなりました。
    • 等高線表示のフィールドデータをテキストファイルへ出力できるようになりました。
    • 次の新しいフィールドデータの表示に対応しました:FOD, NFOD, NTO, NOCVのcharge displacement function (nocv profile), steric fieldなど
  • ADFspectra:
    • ひとつのグラフ上で複数のスペクトルデータを表示できるようになりました。
    • 旧バージョンでは、グラフ上で電子遷移や振動モードの表示位置にカーソルを合わせたときに、関連する情報を示すためのバルーンが表示されていました。新バージョンではその仕様が変更され、別ウィンドウによるテーブルが最初に表示され、そのテーブルから電子遷移や振動モードの情報を確認できるようになりました。
  • ADFinput feature support:
    ADFinput上で下記の新機能の入力設定に対応しました。

    • ADF: 福井関数、DIM/QM法、簡易高速TDDFT計算(sTDAおよびsTDDFT)、TDA近似を使用した励起状態計算、NEB法による遷移状態探索、電子温度による軌道占有数の指定、FRAGOCCUPATIONSキーの自動追加(フラグメント解析で必要な場合)、FOD、NTO、SM12溶媒和モデル、MECPの構造最適化計算、XAS/XESの励起状態計算
    • BAND: 電子ホールの指定、PEDA法を用いたフラグメント解析
    • ReaxFF: ERegimeによる静電場を課した計算の制御、VRegimeによる体積変化の制御
    • DFTB: TDDFTBによる励起エネルギー計算および励起状態の構造最適化計算、FCFスペクトル、SCFのpurification法
  • ADFlevels:
    • 二つのフラグメントを用いた計算のとき、結合性分子軌道と反結合性分子軌道への両フラグメント軌道からの寄与を青色の線で表示するようになりました。
  • ADFmovie:
    • ReaxFFのトラジェクトリーに対してChemtrayzerによる反応解析が可能になりました。また、ReaxFFの多くのプロパティに対してヒストグラムを表示できるようになりました。

Scripting

ASE interfaced with the ADF modeling suite programs

ASE(Atomic Simulation Environment)ツール・コレクション・スイートは、量子化学計算の設定や実行、計算結果の解析と同様に、そのモデリングに対応できるよう、柔軟性が高く、カスタマイズが可能で、使いやすく設計されています。SCMのD. CoupryとT. Soiniによって、ADFモデリング・スイートの主要な計算プログラムとASEとのインターフェースが取られました。ASEで利用できる方法のいくつかが使用できるようになりました。

PLAMS: Python Library for Automating Molecular Simulation

PLAMSパイソン・ライブラリは、分子モデリングにおけるスクリプト作成やワークフローの自動化を容易にすることを目的として、Micha? HandzlikによってSCMで開発されました。PLAMSは、入力作成、ジョブの実行、ファイル管理、出力制御に対処することができ、ADF、BAND、DFTBへのインターフェースを取っています。SCMは、PLAMSをオープンソース(LGPL)としてコミュニティで利用できるようにしています(詳細はSCMにお問い合わせください)。Christoph Jacob教授が率いる関連のpyADFプロジェクトと共に、PLAMSは、SCMも参加する、Lucas Visscher教授主導のオープンソース・プロジェクト「Computational Chemistry made Easy」の構成要素の一つです。本プロジェクトに関する詳細はVisscher教授またはSCMまでお問い合わせください。

FlexMD (Flexible multi-scale Molecular Dynamics simulation): new features

FlexMDは、マルチスケールのシミュレーションに特化した分子動力学用のパイソン・ライブラリで、ユトレヒト大学のRosa Buloのグループによって開発されました。FlexMDはスクリプト作成が必要なエキスパート向けのツールとなります。2016の新バージョンでは、QM/MMシミュレーションに適した水用のPBEベースの力場を、表形式のファイルで用意しました。また、QM領域の中心がより柔軟に定義できるようになり、例えば、ヒドロニウムや水酸化物イオンの位置として設定できます。本機能はプロトン移動の過程をシミュレーションするのに重要です。

adfprep and adfreport : New features for the command line tools adfprep (job preparation) and adfreport (results extraction):

コマンドライン・ツールのadfprep(ジョブファイルの作成)とadfreport(結果の抽出)について下記の新機能が追加されました。

  • 全ての計算モジュール(ADF、BAND、ReaxFF、DFTB、UFF、Mopac)に対応しました。
  • フラグメント解析に対応しました。
  • 構造変化、原子タイプの修正、グループの追加に対応しました。
  • SDFファイルが扱えるようになりました。

ADF in the cloud, GUI via browser

SCMはCrunchyardとの協業でクラウド・サーバー上でのADFの利用を提案しています。本クラウドサービスの無償トライアルにご興味のある方はSCMまたはCrunchyardにお問い合わせください。また、パイロット・プロジェクトとして、ウェブ・ブラウザー上でのGUIの利用を現在試験中です。両プロジェクトについては、現プリンストン大学Dr. J.M. DieterichがSCM在籍時に寄与しました。

Credits EU FP7 projects

新機能に関するいくつかの研究は下記のEUプロジェクトから支援を受けています。

現在のプロジェクトの詳細はhttps://www.scm.com/collaborations/eu-projects/をご覧ください。

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