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概要

 

Structure-Based Drug Design

Structure-Based Drug Design (SBDD)は、標的タンパク質や受容体の立体構造情報に基づいた分子設計法です。MOEのSBDDに関連する機能として、表面のもつ特性解析や化合物のドッキングシミュレーション、結合部位内での対話的な分子設計、フラグメントを用いた分子設計によって新規リガンド候補を探索・提案します。また、タンパク質-リガンド相互作用解析機能を組み合わせて、妥当な候補構造の絞り込みや重要な相互作用の検出が可能です。

受容体の立体構造に基づくリガンド設計

ドッキングシミュレーション

MOEのドッキングシミュレーションは、活性部位候補に対して高速に様々な化合物構造を配置し、安定に存在しうる化合物およびその複合体構造を探索します。受容体との親和性、ポケット形状との適合性、溶媒和を考慮した相互作用エネルギー(MM/GBVI)を評価することで、高精度に結合構造を予測します。化合物データベースに対して計算を行うことで、標的タンパク質と高い親和性が予想される化合物を効率的に探索することが可能です。タンパク質側を可動にしリガンドのドッキングシミュレーションを行う、Induced-Fitも可能です。

また弊社では、MOE用ドッキングプログラムの開発に特に力を入れており、AS_Dock、Ph4Dock、ASEDock (Goto J. et al, 2008)を開発しています。これらのドッキングプログラムは、上記の方法と異なる方法を利用してリガンドの結合様式を予測しており、より精度の高いモデル化と計算の高速化を実現しています。

ASEDock紹介パンフレット(PDF) ASEDock紹介パンフレット(PDF)

ASEDock

リガンド結合部位探索

SiteFinder

タンパク質の活性部位候補となりうるポケット構造を自動的に検出することができます。各ポケットに対して、アルファ球と呼ばれる疎水性(白色)または親水性(赤色)の小球を配置し、各ポケット内における疎水性・親水性領域の分布をグラフィカルに表示します。

この機能は、下記のドッキングシミュレーションのためのリガンド結合部位の選定だけでなく、既存のリガンドの修飾や新規リガンドの設計、ファーマコフォアモデルの作成にも利用することができます。

Protein Ligand Interaction Fingerprints (PLIF)

リガンド-受容体間の相互作用の種類と強さをフィンガープリントで表現し、複数の結合状態を統計的に解析します。ドッキング結果や複数の複合体構造に含まれる相互作用を解析することで、活性/不活性に関連する相互作用の検出や、活性/不活性を分類する相互作用組み合わせルールの抽出、ルールに適合する活性ポーズに共通するファーマコフォアの検出などが行えます。

PLIF

マニュアルデザインのための対話型インターフェース

受容体に結合したリガンド構造を、より良好な活性や物性をもつように対話的にマニュアルで編集することができます。。結合したリガンド構造のうち、置換基を付加できる空間的な余裕のある箇所は分子グラフィックス上でマークされます。リガンド構造の分子量やlogPなどの物性、受容体との親和性、リガンドのひずみエネルギー、毒性に関わる部分構造の有無、合成可能性スコアなどの値は常に表示され、リガンドの改変に応じてすぐに更新されます。

LigXによる複合体構造からのマニュアルデザイン例

3D-RISM法による溶媒解析

統計解析的な手法で溶媒分子の確率密度を解析することにより、高速かつ高精度に溶媒分子の位置を予測します。水溶媒や塩、疎水性原子の確率密度分布、溶媒和エネルギー分布を複合的に解析することで、リガンド結合部位における溶媒の影響を容易に理解することができます。
∗Kovalenko, A.; Hirata, F. Self–consistent description of a metal–water interface by the Kohn–Sham density functional theory and the three–dimensional reference interaction site model; J. Chem Phys. 1999, 110, 10095-10112.

MOE溶媒解析機能(PDF)

3D-RISM

分子表面解析

分子の表面形状として、溶媒接触表面とInteraction表面の2種類を描画することができます。溶媒接触表面はプローブ球の接触可能な表面を描画します。 Interaction表面は、受容体原子とプローブ球とのvan der Waals相互作用エネルギーがほぼ 0 kcal/molとなる面を描画します。それぞれの表面は、水素結合性、静電ポテンシャル、凹凸などを指標にした色分けにより、分子表面の特性を視覚的に解析できます。

分子表面の描画例: リガンド(水色・透過)と受容体(疎水性/水素結合性を示すActiveLPスキーム色)

分子表面付近の特性解析

表面に対する相互作用相手の原子として好まれる特性領域をグラフィカルに表示します。領域は静電ポテンシャルや、PDBデータに対する統計解析、相互作用エネルギーなどを基に予測されます。複合体構造における相互作用の安定性に寄与している部分構造の予測や、分子設計の改変に適した箇所を検出できます。

受容体ポケット構造表面から算出した親水性原子(紫)/疎水性原子(緑)の現れる確率の高い領域と実際のリガンド原子位置の一致

母核構造置換/フラグメント付加・連結

フラグメント連結の指定と探索結果例

結合状態が既知のリガンドやドッキング構造に対して、母核構造の置き換えや官能基の付加、複数フラグメントの結合を行うことで、新規リガンド候補を提案します。MOEに付属する80万件以上のフラグメントデータベースもしくはin-houseフラグメントデータを結合して、受容体ポケット空間を考慮した衝突のない構造を提案します。

フラグメントの結合条件として、結合の方向と組み合わせを2種類のベクトルで定義できます。これにより結合距離や結合角の妥当な構造を探索でき、様々な結合の組み合わせを同時に計算できます。また、環化や環縮合を伴う結合条件も指定できます。

得られた構造は分子記述子やQSARモデル式、ファーマコフォア条件によって絞り込むことができます。さらに、合成可能性スコアや、ドッキング同様の構造最適化計算による親和性スコアによる順位付けから、実験に使用する構造の優先度を決定できます。

構造変換ルールによる新規分子構造への展開

既存リガンドを、構造変換ルールに基づいて分子構造を自動的に改変します。メディシナルケミストの知見を反映させた生物活性を保ちうる175種の部分構造変換ルールが標準で搭載されており、ルールはRXNファイルを利用して追加・編集が可能です。

新規リガンドは元のリガンド配置を考慮して再配置されます。母核置換同様、受容体、ファーマコフォアなどを考慮した変換が可能です。

変換ルールに基づく新規リガンド構造の提案例。変換後の立体構造座標は受容体との衝突のない、また変換していない原子座標をなるべく保持した配置が得られる。

置換基の交換による新規リガンド設計 (BREED)

重ね合わせた化合物から、構造の「掛け合わせ」を行い、新規化合物を発生させます。複数の化合物で共通する結合位置を基準にして、置換基をお互いに入れ替えます。受容体構造がある場合は結合部位において構造最適化を行います。
BREED

MOEプロジェクトデータベースの構築

SBDD研究には、PDBの構造以外にも多種多様な情報が用いられます。MOEプロジェクトデータベースには、標的タンパク質の活性部位での重ね合わせ構造や、リガンド構造、重要残基の構造アノテーション、アラインメント情報、リガンドの物性値、電子密度、実験値などのSBDDに活用できる情報を一つのデータベースに収録できます。創薬やエピジェネティックターゲットに利用できる14種類のMOEプロジェクトデータベースが標準で搭載されています。MOEプロジェクトデータベースは、ユーザー独自の定義で作成することができます。

作成されたMOEプロジェクトデータベースから、キーワードや種、配列相同性、リガンドの類似度、ポケットの類似度、構造アノテーション(例 キナーゼのDFG in, out)等で柔軟な検索を行う為のインタフェースが搭載されています。ヒットした構造の可視化、統計情報、PLIF解析が可能です。

また、その他のデータコンテンツについてはこちらをご参照ください
Project

相互作用解析に必要な前処理を一括実行

受容体-リガンド複合体の立体構造から相互作用解析やリガンドデザインを行うためには複数のステップからなる前処理が必要です。煩雑になりやすいこれらの前処理は統合されており、立体構造の取得からスムースに相互作用解析・ドッキング計算を行うことができます。取得した立体構造に対して、Protonate3Dによる高速な水素原子付加状態の最適化、相互作用に関与しない溶媒分子の除去、そして受容体構造を保持したまま相互作用部位周辺のひずみエネルギーを除く構造最適化といった前処理を一括して行います。処理内容の編集や保存も可能です。

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